手術室における体温管理② 低体温がダメな理由
前回の続き。
一般的に、中枢温35℃以下を低体温とされている。
その結果、どんな悪影響があるか。
1.心臓の収縮力が落ちる
→低体温により末梢血管が収縮、心臓は収縮力が落ちているため心負荷増大、結果心筋虚血を起こす要因の一つとなる。正常体温群の方が術後24時間の虚血性心疾患・異常心電図の出現が優位に少ないとの臨床研究がある。
2.出血量増加
→低体温は血小板の機能障害を招くとされている。結果、出血傾向となりやすい。
3.感染リスクが上がる
→低体温は炎症反応を抑制し、その結果免疫反応も抑制される。好中球・マクロファージの機能を抑制する。結果、易感染状態となる。
4.薬物代謝機能低下
→低体温は肝臓の代謝能を低下させるとする臨床研究がある。結果、麻酔薬も代謝されず、覚醒遅延を引き起こす。
5.単純に不快
→覚醒時、寒い。震える。不快。
6.シバリング発生による弊害
→シバリングに関しては別の日にまとめたいので省略。
等があり、一般の手術においては不利益しか生まない。救命領域や心臓外科手術なんかで脳を保護するために低体温療法を利用することもあるが、基本的には低体温は敵である。低体温療法については気が向いたら調べたい。
以上。