小児の麻酔 あれこれ
私のいる病院は小児の手術が少ない。多指症・扁摘・皮膚腫瘍あとは骨折位だろうか。数が少ないが故になかなか慣れないものである。
先日、5歳の女児の手術を担当した。前日が休みだったので術前訪問に自分で行けなかったのだが、5歳女児といえばプリキュアだ。GEOでプリキュアのDVDを借り、用意した。当日朝、電子カルテをみると「希望DVD:プリキュア」の文字。予想が当たり、DVDが無駄にならずに済んだ。ヒーリングっどプリキュアではなく、スタートゥインクルプリキュアを推した自分を褒めたい。
女児が入室した瞬間「あっ!」と良いリアクションをしてくれた。泣くことなく、スローで麻酔導入できた。よかった。
今回は小児の全身麻酔についてまとめる。
目次
呼吸
気道が狭い
①小児は口が小さく、相対的に舌が大きい。
②頭部が大きく、首が屈曲しやすい。
③気管が細く、気道抵抗が高い。
以上から、気道が狭い。上気道浮腫や分泌物の貯留があると容易に上気道閉塞を起こす。
呼吸中枢が未熟
成人の場合は、二酸化炭素の貯留・低酸素血症により呼吸が促進されるが、新生児・乳児は呼吸中枢が未熟のため、呼吸停止を起こす。また、小児は代謝率が高く、酸素消費量が多いため、呼吸停止により容易に低酸素血症になる。
肋骨が柔らかい
小児は疲労に強いⅠ型筋繊維が少ないため、容易に呼吸筋疲労を起こす。呼吸には肋間筋や胸鎖乳突筋等多くの呼吸補助筋が関わっている。成人では呼吸補助筋による胸式呼吸が有効な呼吸となるが、小児の肋骨は柔らかく、呼吸補助筋による胸式呼吸には適さない。
薬物代謝
水分が体重に占める割合は、新生児90%、乳児80%、幼児70~75%、成人60%。水分が多いほど薬剤の分布容量が大きくなるため、体重当たりの薬剤量が成人に比べると多く必要になる。
多くの薬剤は肝臓で代謝され、腎臓で排出される。肝機能は生後2~3か月、腎機能は6~12か月で成人とほぼ同等となるとされている。
以上から、小児は体重当たりの薬剤が多く必要だが、代謝が悪いため薬効が切れにくいということになる。
体温
全身麻酔後の急激な体温低下は、主に麻酔による末梢血管拡張、体温の再分布によるものである。「手術室における体温管理① 体温が下がる理由」
しかし、乳幼児は頭部・体幹が大きく、手足が短いため、再分布する末梢組織が小さく、体温低下は少ない。よって、うつ熱を生じやすい。
皮膚が薄く、皮下脂肪も少ないため環境に左右されやすい。開腹手術等のように体温喪失が大きい手術では体温が下がりやすい。
と、今日は簡単に。以上。