手術室看護師の日記

今更聞けないこと、気になった事を調べてみる。あと日記。ダイエットの事。

手術室における体温管理④ 悪性高熱症

手術室における体温管理① 体温が下がる理由 - 手術室看護師の勉強しようブログ

手術室における体温管理② 低体温がダメな理由 - 手術室看護師の勉強しようブログ

手術室における体温管理③ シバリングとその弊害 - 手術室看護師の勉強しようブログ

 

体温管理シリーズ 第4回。

悪性高熱症について調べる。

悪性高熱症 主に全身麻酔中に異常な高熱を発する、常染色体優性遺伝の疾患。吸入麻酔や脱分極性筋弛緩薬等がトリガーとなって発症し、重篤な症状急激に進行する致死性疾患。早期発見・早期治療がなされなければ死に至る。発生率1/60000程度、死亡率は10~20%とされている。

 

調べた結果、簡単にまとめる。

全身麻酔に使用する吸入麻酔・筋弛緩薬がきっかけで、筋収縮の異常な亢進、代謝の亢進が起こる。筋肉の細胞が破壊されるほどに。それはもう高熱を発する。15分で0.5℃以上の体温上昇。

 

全身の筋肉がそんなだから、O2大量消費してチアノーゼになる。O2大量消費しているのでCO2大量産生。EtCO2(終末呼気二酸化炭素濃度)上昇。吐く息の中のCO2濃度が異常に高くなるという事。

 

筋肉の細胞が崩壊するので、細胞内からミオグロビンやカリウムが大量に血中へ放出。ミオグロビン尿がみられる。大量のミオグロビンは腎臓の尿細管を閉塞させ、急性腎不全の原因となる。また、高カリウム血症となり、頻脈・不整脈が出現する。最悪心停止する。

 

ミオグロビンや高熱がDIC(播種性血管内凝固)を発生させ、最悪多臓器不全で死に至る。

 

発生時の対処。

・吸入麻酔を直ちに中止、高流量・純酸素で過換気にする。人手があれば麻酔器の交換を行う。

 →低酸素状態かつ二酸化炭素が溜まっているので過換気に。麻酔器の交換よりも治療を優先させる。

 

・筋弛緩薬ダントロレンを投与。初回1~2mg/kgを10~15分かけて静注する。症状改善するまで追加投与する。

・中枢温38℃以下になるまで冷却する。室温・輸液・クーリング等、冷やせるものはなんでも冷やす。体温上昇を防ぐことが予後を決定する大きな因子。

・十分な輸液と利尿薬で十分な尿量確保(2ml/kg/H以上)。

 

・高K血症にはGI療法。インスリン50単位+50%ブドウ糖液50ml投与。

 →血中のカリウムを減らす方法は2種類しかない。細胞内に取り込ませるか、尿で排出するか。インスリンブドウ糖カリウムを細胞内に取り込む性質があるのを利用する。

 

 

と簡単にまとめたが、いまだに遭遇したことがない悪性高熱。早期発見・診断・治療できなければ死に至るため、常に頭の片隅に意識を持っておかなければ。以上。